「WordPressアップデート徹底解説」は4つの記事から構成されています。
- 【WordPressアップデート徹底解説①】更新する理由と時期
- 【WordPressアップデート徹底解説②】更新の長期ビジョン
- 【WordPressアップデート徹底解説③】更新のための確認と準備
- 【WordPressアップデート徹底解説④】更新と検証
第2回のこの記事では、WordPressの推奨環境を基にして、WordPressのシステム構成要素のロードマップを使った過去、現在、未来の長期的なビジョンで、現在あるべきバージョンの姿を見定め、どのようなサイクルでアップデートが発生するかを予測します。
WordPressのシステム推奨環境の確認
一般に、ソフトウェアには動作を検証するために標準環境が定められています。
WordPress6.6の推奨環境の要件は次のように規定されています。
WordPressは、プログラミング言語「PHP」とリレーショナル・データベース管理システムである「MySQL」、または、「MariaDB」で構成されており、使用するサーバー環境に依存します。
「PHP」、「MySQL」/「MariaDB」で現在使用中のバージョンと変更対応可能なバージョンは、ご利用のレンタル・サーバー会社、または、サーバー管理者に確認する必要があります。
次のテーブルは、各WordPressのバージョンの環境仕様をまとめたものです。
WordPress | PHP | MySQL | or | MariaDB | |
Version | Version | Version | |||
Requirements | Operable | Requirements | |||
Min | Max | Min | Min | ||
6.0 – 6.3 | 7.4 | 5.7 | or | 10.3 | |
5.9 | 7.4 | 5.7 | or | 10.2 | |
5.5 – 5.8 | 7.4 | 5.6 | or | 10.1 | |
5.3 – 5.4 | 7.3 | 7.4 | 5.6 | or | 10.1 |
5.2 | 7.3 | 5.6 | or | 10.1 | |
5.0 – 5.1 | 7.3 | 5.6 | or | 10.0 | |
4.9.5 – 4.9.12 | 7.2 | 5.6 | or | 10.0 |
この記事で次に説明しているPHP、MySQL、MariaDBのロードマップと照らし合わせて、それぞれのバージョンのリリース間隔やライフ・タイム(寿命)を考慮して、推奨環境に適合させることをおススメします。
WordPressのシステム構成要素のロードマップ
WordPressのシステム構成要素のロードマップの意義
WordPressの主要構成要素であるプログラミング言語(「PHP」)やデータベース管理システム(「MySQL」、または、「MariaDB」)のロードマップを理解すると、それぞれのバージョンの成熟度や切替のタイミングが予測できます。
PHPのロードマップ
現在(2023年08月)のPHPのロードマップは次の通りです。(PHPウェブページ参照)
PHPバージョン | リリース日 | 一般サポート最終日 | セキュリティ・サポート最終日 |
7.4 | 2019年11月28日 | 2021年11月28日 | 2022年11月28日 |
8.0 | 2020年11月26日 | 2022年11月26日 | 2023年11月26日 |
8.1 | 2021年11月25日 | 2023年11月25日 | 2024年11月25日 |
8.2 | 2022年12月8日 | 2024年12月8日 | 2025年12月8日 |
PHPの新しいバージョンが毎年、11月(8.2は12月)にリリースされています。一つのバージョンの寿命が3年で、その内、初めの2年は報告されたバグ(不具合)の解決やセキュリティ対応のサポートで、後の1年はセキュリティ対応のみのサポートになります。したがって、1~2年ごとのメジャー・アップデートが必要になります。
おススメの理由は次のようなPHPバージョン別のマーケット・シェアを示すWordPressの統計情報、アーリー・アダプターの成熟度、および、Invisible reCapchaといったWordPressプラグインのサポート状況の観点からです。(詳細は第1回、および第3回の記事の解説をご参照ください。)
MySQLのロードマップ
2021年02月現在のMySQLのロードマップは次の通りです。
MySQLの新しいバージョンが2~3年間隔でリリースされ、1つのバージョンの寿命が8年であることから、3~4年ごとのメジャー・アップデートが必要になります。
2022年05月現在のおススメのリレーショナル・データ管理システムはMySQL8.0です。
理由は、次のようなMySQLとMariaDBのバージョン別のマーケット・シェアを示すWordPressの統計情報、および、アーリーアダプターの成熟度の観点からです。(詳細は第1回の記事をご覧ください。)
MariaDBのロードマップ
2023年08月現在のMariaDBのロードマップは次のようになっています。
MariaDBはた長期保守バージョンと短期保守バージョンで構成されています。新しい長期保守バージョンは1~2年の間隔でリリースされ、1つのバージョンのライフ・タイム(寿命)は安定リリース後5年であることから、2~3年ごとのメジャー・アップデートが必要になります。
MariaDBのおススメ(2023年08月現在)は長期保守バージョンのMariaDB10.5です。
市場で使われているMariaDB10.5は5.4%、MariaDB10.6は5.1%です(WordPressの統計情報 2023年8月現在)。MySQLとの互換性に配慮していたMariabDB5.1~5.5と異なり、MariaDB10.0以降、独自機能を組み込み、MySQLとの差別化が図られています。MySQLと比べて、リリース間隔、各バージョンのライフ・サイクルが速く、新しい機能が速いペースで組み込まれていましす。
WordPress更新のためのPHPとMySQLのバージョンとアップデート・サイクル(まとめ)
WordPressは、プログラミング言語「PHP」とリレーショナル・データベース管理システムである「MySQL」、または、「MariaDB」で構成されていて、2023年08月現在のおススメのPHP8.1とMySQL8.0(または、MariaDB10.5)はWordPress6.3の推奨環境を満たしていますが、アーリーアダプターの成熟度で判断しているので、リスクを少なくしたい方は、これらより古いバージョンも古いものも候補として考えられます。
- PHP7.4以降
- 将来的に1~2年ごとのメジャー・アップデートが必要
- MySQL5.7以降 (または、MariaDB10.3以降)
- 将来的に3~4年ごとのメジャー・アップデートが必要
これで、WordPressを更新する時期とロードマップを基にしてシステム構成要素をどのバージョンにすべきかが明確になったので、次の第3回目の記事は、「WordPress更新のための確認と準備」について解説します。