【WordPressアップデート徹底解説②】更新の長期ビジョン

赤いバラがつぼみから育っている様子 ウェブサイト運営の知恵

「WordPressアップデート徹底解説」は4つの記事から構成されています。

第2回のこの記事では、WordPressの推奨環境を基にして、WordPressのシステム構成要素のロードマップを使った過去、現在、未来の長期的なビジョンで、現在あるべきバージョンの姿を見定め、どのようなサイクルでアップデートが発生するかを予測します。

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WordPressのシステム推奨環境の確認

一般に、ソフトウェアには動作を検証するために標準環境が定められています。

WordPress6.3の推奨環境の要件は次のように規定されています。

WordPress6.0の推奨環境

PHPバージョン7.4以上

MySQLバージョン5.7以上、またはMariaDBバージョン10.3以上

Nginx または mod_rewrite モジュールありの Apache

HTTPS 対応

https://ja.wordpress.org/about/requirements/
ちょっとした豆知識 (httpsサポートとは)

WordPressは、プログラミング言語「PHP」とリレーショナル・データベース管理システムである「MySQL」、または、「MariaDB」で構成されており、使用するサーバー環境に依存します。

「PHP」、「MySQL」/「MariaDB」で現在使用中のバージョンと変更対応可能なバージョンは、ご利用のレンタル・サーバー会社、または、サーバー管理者に確認する必要があります。

次のテーブルは、各WordPressのバージョンの環境仕様をまとめたものです。

WordPressPHPMySQLorMariaDB
VersionVersionVersion
RequirementsOperableRequirements
MinMaxMin Min
6.0 – 6.37.45.7or10.3
5.97.45.7or10.2
5.5 – 5.87.45.6or10.1
5.3 – 5.47.37.45.6or10.1
5.27.35.6or10.1
5.0 – 5.17.35.6or10.0
4.9.5 – 4.9.127.25.6or10.0

この記事で次に説明しているPHP、MySQL、MariaDBのロードマップと照らし合わせて、それぞれのバージョンのリリース間隔やライフ・タイム(寿命)を考慮して、推奨環境に適合させることをおススメします。

WordPressのシステム構成要素のロードマップ

WordPressのシステム構成要素のロードマップの意義

WordPressの主要構成要素であるプログラミング言語(「PHP」)やデータベース管理システム(「MySQL」、または、「MariaDB」)のロードマップを理解すると、それぞれのバージョンの成熟度や切替のタイミングが予測できます。

ちょっとした豆知識

WordPressを使ってブログサイト運営するのにレンタル・サーバーをご利用の場合、Wordpressの主要構成要素のロードマップを知ることにより、どのバージョンのプログラミング言語やデータベース管理システムが利用できる体制にしているかでレンタル・サーバー会社の将来のリスク管理能力が理解でき、レンタル・サーバーを選ぶ際に考慮すべき情報の1つになります。

特に、リレーショナル・データベース管理システムは、MySQLとMariaDBとの市場競争力の変化などで、レンタル・サーバー会社がどちらのデータベース管理システム、どのバージョンをサポートしているかで、今後、レンタル・サーバーの選択を検討しましょう。

PHPのロードマップ

現在(2023年08月)のPHPのロードマップは次の通りです。(PHPウェブページ参照

PHPバージョン

リリース日一般サポート最終日セキュリティ・サポート最終日

7.4

2019年11月28日2021年11月28日2022年11月28日

8.0

2020年11月26日2022年11月26日2023年11月26日

8.1

2021年11月25日2023年11月25日2024年11月25日
8.22022年12月8日2024年12月8日2025年12月8日
PHPのロードマップ(2023年8月現在)
PHPのロードマップ(2023年8月現在)

PHPの新しいバージョンが毎年、11月(8.2は12月)にリリースされています。一つのバージョンの寿命が3年で、その内、初めの2年は報告されたバグ(不具合)の解決やセキュリティ対応のサポートで、後の1年はセキュリティ対応のみのサポートになります。したがって、1~2年ごとのメジャー・アップデートが必要になります。

PHPのおススメ・バージョンは?

2023年08月現在のおススメはPHP8.2です。

  • 古いバージョンのPHPをお使いの方はサポート期間や最新バージョンへの移行を念頭に置いて、レンタル・サーバーのを定することを検討しましょう。

おススメの理由は次のようなPHPバージョン別のマーケット・シェアを示すWordPressの統計情報、アーリー・アダプターの成熟度、および、Invisible reCapchaといったWordPressプラグインのサポート状況の観点からです。(詳細は第1回、および第3回の記事の解説をご参照ください。)

PHPバージョンのシェア状況(2023年8月現在)
PHPバージョンのシェア状況(2023年8月現在)

MySQLのロードマップ

2021年02月現在のMySQLのロードマップは次の通りです。

MySQLのロードマップ(2021年02月現在)
MySQLのロードマップ(2021年02月現在)

MySQLの新しいバージョンが2~3年間隔でリリースされ、1つのバージョンの寿命が8年であることから、3~4年ごとのメジャー・アップデートが必要になります。

2022年05月現在のおススメのリレーショナル・データ管理システムはMySQL8.0です。

理由は、次のようなMySQLとMariaDBのバージョン別のマーケット・シェアを示すWordPressの統計情報、および、アーリーアダプターの成熟度の観点からです。(詳細は第1回の記事をご覧ください。)

MySQL/MariaDBバージョンのシェア状況(2022年5月現在)
MySQL/MariaDBバージョンのシェア状況(2022年5月現在)

MariaDBのロードマップ

2023年08月現在のMariaDBのロードマップは次のようになっています。

MariaDBのロードマップ(2023年8月現在)
MariaDBのロードマップ(2023年8月現在)

MariaDBはた長期保守バージョンと短期保守バージョンで構成されています。新しい長期保守バージョンは1~2年の間隔でリリースされ、1つのバージョンのライフ・タイム(寿命)は安定リリース後5年であることから、2~3年ごとのメジャー・アップデートが必要になります。

MariaDBのおススメ(2023年08月現在)は長期保守バージョンのMariaDB10.5です。

MariaDBバージョンのシェア状況(2023年8月現在)

市場で使われているMariaDB10.5は5.4%、MariaDB10.6は5.1%です(WordPressの統計情報 2023年8月現在)。MySQLとの互換性に配慮していたMariabDB5.1~5.5と異なり、MariaDB10.0以降、独自機能を組み込み、MySQLとの差別化が図られています。MySQLと比べて、リリース間隔、各バージョンのライフ・サイクルが速く、新しい機能が速いペースで組み込まれていましす。

WordPress更新のためのPHPとMySQLのバージョンとアップデート・サイクル(まとめ)

WordPressは、プログラミング言語「PHP」とリレーショナル・データベース管理システムである「MySQL」、または、「MariaDB」で構成されていて、2023年08月現在のおススメのPHP8.1とMySQL8.0(または、MariaDB10.5)はWordPress6.3の推奨環境を満たしていますが、アーリーアダプターの成熟度で判断しているので、リスクを少なくしたい方は、これらより古いバージョンも古いものも候補として考えられます。

  • PHP7.4以降
    • 将来的に1~2年ごとのメジャー・アップデートが必要
  • MySQL5.7以降 (または、MariaDB10.3以降)
    • 将来的に3~4年ごとのメジャー・アップデートが必要
備考

MariaDBは2~3年ごとのメジャー・アップデートが必要で、サイクル・スピードがMySQLの3~4年より速いので、将来的に市場優位性の変化が起こる可能性があります。

レンタル・サーバー契約を検討するときは、PHP、MySQL/MariaDBの最新ロードマップを確認して、レンタル・サーバー会社の各バージョンのサポート状況を理解してから採用決定されることをおススメします。

これで、WordPressを更新する時期とロードマップを基にしてシステム構成要素をどのバージョンにすべきかが明確になったので、次の第3回目の記事は、「WordPress更新のための確認と準備」について解説します。