炊飯器でお米を炊くのは、米を主食とする人にとって毎日のことです。
タイマーを使えば朝に起きた時にお米の炊きあがった香りが漂い、「もちもち」して炊き立てのおいしいお米がいただけるので、「象印」の圧力IH炊飯器を8年以上愛用しています。
ある朝、「E12」というエラー・コードが炊飯器の液晶表示に出て、お米が炊けておらず困ってしまいました。「炊飯」ボタンを押しても、炊飯加熱が始まらなかったのです。
この記事は、「象印」の圧力IH炊飯器で発生した「E12」というエラー・コードの故障をセンサーの調整で修理した方法や知識を経験に基づいて解説しています。
炊飯器の問題状況
修理した炊飯器は「象印(Zojirushi)」圧力IH炊飯ジャー”極め炊き”「NP-SC10」という2012年発売の1.0Lサイズ(5.5合炊き)モデルです。
お釜や気密性を保持するパッキンなどに問題なく、炊飯器の「炊飯」ボタンを押すと、正常であれば数十秒後に「ブオー」といった音で炊飯の加熱が始まるのに、「ピピ」といった音を一度出して止まってしまい、「E12」というエラー・コードが液晶に表示されで動作しません。
「E12」というエラーを炊飯器の取り扱い説明書で調べると、次のような説明でした。
- 「故障です。」
- お買い上げの販売店または弊社のお客様ご相談窓口までご連絡ください。
「故障です」というのは、「修理部門以外での対応ができない」という意とメーカーの「よくある質問(FAQ)」に書かれています。
- 「象印」の炊飯器のエラー・コードの数はIH炊飯器の方が少なく、E09/E11/E12といったエラー・コードは存在していません。
- IH炊飯器(圧力をかけないタイプ)の場合:例)8種類
- 圧力IH炊飯器(圧力をかけるタイプ)の場合:例)20種類
- Eは電気系統のエラーを示していて、E09/E11/E12は圧力センサー不良(断線、電圧不良、ショートなど)。
炊飯器にE12のエラー・コードが出る原因
E12のエラーの出る原因の可能性として次が考えられます。
- 内蓋(うちぶた)の圧力調整装置内の汚れ
- パッキンの劣化や破れなどによる蒸気の侵入で圧力センサーが誤作動
- 圧力センサーの部品の故障
- 圧力センサー付近のリード線の接触不良、または、断線
これらの原因の可能性を考慮して、炊飯器でE12のエラー・コードが出たときの対応を考え、すぐにできる事からやってみましょう。
炊飯器でE12が出た時の対応の選択肢
炊飯器の清掃
まず最初に、取り扱い説明書の「お手入れ」にしたがって、内部圧力に関連すると思われるパッキンや内蓋を清掃して、「E12」のエラーがなくなるかを確認しましょう。
特に、内蓋のボール(球)がついている安全弁や圧力調整装置に、炊き込みご飯などに使用した食材など異物が混入していないように入念に清掃します。
炊飯器内部の清掃で「E12」のエラーが解消することもあるので、試してみましょう。
炊飯器メーカーへの故障修理依頼
メーカーのウェブ・ページには次のような情報がありました。
- メーカーの補修用部品の保有期間は6年(メーカーのウェブ・ページの「補修部品の保有期間について」参照)です。
- NP-SC10は2012年のモデルで、すでに6年以上経過しているので修理依頼しても交換部品がない場合があります。
- 修理ができたとしても、6,000円~11,000円程度の出費を覚悟しなければなりません(メーカーのウェブ・ページの「修理料金の目安」参照)。
- 修理日程の目安(5~12日)
- 引き取り:1~3日
- 修理:3~6日
- お届け:1から3日
- 修理日程の目安(5~12日)
一旦、修理に出すと、新しい炊飯器を買うわけにもいかず、修理期間中に炊飯器が家にないのは不便です。
メーカーの宅配便引き取り修理の場合、修理品引き取り料金(家庭用製品の場合, 税別1,200円)がかかりますが、メーカーでテスト用に使用している商品を修理中に貸し出してくれる場合もあるので、代替え機の貸し出し対応を確認してみましょう。
炊飯器の新規購入
家電量販店で新しい炊飯器を買って「持ち帰り」にすれば、すぐにご飯が炊けるようになりますが、家族で使うサイズの5.5合炊きの圧力IH炊飯器(新品)の価格は1.5万円以上していました。
ネット・ショップで炊飯器の価格を調べると、5.5合炊きの圧力IH炊飯器は1万円以上します。配送などに時間がかかるので、故障が発生したた当日には間に合いません。
自己責任で故障をDIY修理
お金をできる限りかけずに炊飯器を使えるようにするために、自分で故障を修理するという方法があります。
DIY(Do It Yourself)は、一般の方がホームセンターや通販などで工具や部品を購入して、日曜大工のようにモノを作ったり、直したりすることです。
これは表裏一体で、自分で思い通りできるとか安くできるとかメリットもありますが、デメリットもあります。
自分で修理した場合は、メーカーの保証外になり可能性もあり、修理結果に対しても責任を持たなければなりません。問題が起きても、作業した人以外、誰も他に責任を取ってくれる人はいないのです。
以下の記事は自己責任で修理すると決心した人向けに、必要な知識や工具の使い方を解説しています。
炊飯器の修理に使用した工具
修理に使用した工具と使用目的は次の通りです。
- 「スクリュー(+)・ドライバー」
- 炊飯器の内部を見るのに、カバーを外すため
- 「6角レンチ」(4mm)
- 圧力センサーの調整のため
- 「千枚通し」(または、先がとがっているもので、変形しなければ代用可)
- ネジ頭を隠しているシールをはがすため
写真では、左から「千枚通し」、「スクリュウー・ドライバー」、「6角レンチ」の順にならんでいます。(定規は、工具サイズの目安に置いています。)
炊飯器の修理手順
炊飯器の電源コードをコンセントから抜く
最初に、作業中に感電しないように、炊飯器の電源コードをコンセント(AC100V)から抜いておきましょう。
炊飯器のカバー(蒸気口セット)を取ってねじを外す
- 炊飯器の上部にあるカバー(蒸気口セット)を外します。
- 押し込んであるだけなので、簡単に取れます。
- カバーの下にある2つのネジ(+)をスクリュー・ドライバーで外します。
炊飯器の上蓋上部のシールとネジを外す
- 炊飯器の上蓋(うわぶた)を開けます。
- 炊飯器の上蓋上部にある黒い丸い形状のシールを「千枚通し」などの先がとがったもので端を引っかけて、キレイに剥がします。
- 修理終了後にシールを再利用します。
- シールをはがすと、ネジ(+)頭が見つかるので、ネジをスクリュー・ドライバーで外します。
炊飯器の上蓋のカバーを外す
上蓋(うわぶた)についている内蓋(うちぶた:NP-SC10の場合、内蓋が2重で一体になっている)を外します。
上蓋のカバーには開閉のための機械的なフックがついていて、引っ掛かりのラッチで篏合(かんごう)しています。ネジがついていた筐体(きょうたい)の外側の隙間(すきま)に指先等を入れて、隙間に沿って隙間を広げていき、フック付近になる引っ掛かりのラッチが外れると、上蓋のカバーを取り外すことができます。(硬いので、ケガをしないように気を付けましょう。)
炊飯器のセンサーの調整
6角ネジ位置によるセンサーの調整方法
上蓋のカバーを取り外すと、炊飯器の内部の部品をみることができます。
6角形の穴のある部品がセンサーです。この穴に6角レンチを入れて回す角度で調整していきます。
6角ネジのオリジナルの初期位置から反時計方向に90°ずつ回していくと、6角ネジが穴から抜けるまで「E12」のエラーは出なくなりました。
下の表は、私が調整した圧力IH炊飯器で実験的に得られた結果です。
反時計方向にネジを5回転させると、穴からネジが抜けてしまいました。
穴の内部にはバネが入っており、6角ネジで内部を押さえつける構造になっています。
6角ネジが穴から抜けてしまうと、お釜の内部の圧力が外に抜けてしまい、圧力炊飯器としての機能が働きません。
6角ネジが穴から抜けていなくても、調整位置が適正値でない場合、炊飯時間が短くなり、炊飯が終わった時に自動で保温モードに入らない現象もみられました。
6角ネジ位置によるセンサー調整位置の考え方(参考)
実験的に得られた結果から6角ネジを反時計方向に(ネジが抜ける方向)に回していくととネジが抜けるまでずっと「E12」のエラーが出ませんでした。では、なぜ、「E12」のエラーが出る/出ないのギリギリの位置に6角ネジが調整するのでしょうか?
炊飯器メーカーの技術者は、コメの炊きあがりが「もちもち」となるように、炊飯釜の内部の圧力をあげて水の沸騰温度を高くするような設計に努めています。
圧力や温度が設計目標値より高すぎると、炊飯器の内部構造が高温高圧に耐えきれずに壊れる可能性があります。
そのために、フェイル・セーフ機構(万が一のための安全機構)が準備されており、保証できる最も高い圧力や温度を検出して、それ以上の圧力や温度であれば、安全機能が働いて圧力を抜いたり、炊飯動作を止めたりするのです。
6角ネジをもっと反時計方向に回して、6角ネジが穴から抜けても、「E12」が出ることはありませんでした。しかし、これは圧力が下がり、炊きあがりのお米の「もちもち」感が少なくなる方向です。
したがって、この記事で解説したセンサーの調整で「E12」のエラー・コードが出ないギリギリの6角ネジの位置が、メーカーが保証できる最も高い圧力と温度で炊きあがりのお米の「もちもち」感が最大にできる設定だと考えています。
炊飯器の動作確認
炊飯器を開いて手順と逆の手順で上蓋やカバーを戻していきます。
炊飯器の電源コードを100Vコンセントに差し込みます。
「炊飯」ボタンを押して、数十秒待ち、「E12」のエラーが液晶表示に現れずに、炊飯が始まるかどうか確認します。
炊飯が始まれば、センサーの調整はOKで、修理完了です。
修理後、今まで通りにご飯を炊いて、問題ない事を確認しましょう。
お疲れさまでした。
まとめ
この記事では、象印の圧力IH炊飯器で発生した「E12」というエラー・コードの故障を自己責任で修理すると決心した人向けに、炊飯器の筐体の解体の方法、6角ネジ位置によるセンサーの調整方法を解説しました。
圧力IH炊飯器は、メーカーの技術者が開発した炊飯器をつかって「おいしいお米を食べてもらいたい」という「技術者スピリット」でできています。それを理解して、家電製品はできる限り、大切に、長く使い続けたいものですね。
この記事を通して、あなたの日々の生活に必要な「食」のお役に立てれば幸いです。